
「高用量E0302の筋萎縮性側索硬化症に対する第Ⅲ相試験
-医師主導治験-」について
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お知らせ
背景
ALSは、脳や脊髄からの命令を筋肉に伝える役割をしている運動ニューロン(運動神経細胞)が、何らかの原因で障害されて、脳からの信号が筋肉に伝わらなくなる病気です。思い通りの動作ができなくなり、筋肉がやせていったり、症状が進むと、呼吸筋も次第に弱くなっていき、人工呼吸器の助けを借りなければ呼吸ができなくなります。通常、呼吸障害または重度の嚥下障害により、発症後3~6年以内に死に至る病気です。この病気の治療には現在、内服薬のリルテック®錠(リルゾール)と点滴静注薬のラジカット®(エダラボン)のみが承認されていますが、標準治療はまだ確立されていません。
メコバラミンは活性型のビタミンB12であり、日本では末梢性神経障害や巨赤芽球性貧血の治療剤として1回0.5 mgの用量で用いられています。一方、1回25 mgまたは50 mgの高用量メコバラミンは、神経変性に対する保護作用により、ALS治療において有用な治療法の一つとなる可能性が非臨床および臨床研究の結果から示唆されました。高用量メコバラミンを使用したエーザイ株式会社による臨床第II/III相試験(投与期間最大3.5年、症例数370例)では、全体集団として有意差はみられませんでしたが、ALS発症後1年以内に登録した約150人(メコバラミン25 mg群:48例、50 mg群:54例、プラセボ群:42例)での部分的な検討では、メコバラミン50 mgはプラセボに比べて平均余命(呼吸補助装置の装着あるいは死亡までの期間)を600日以上(中央値)延長し、安全性についても大きな問題はないことを確認しました。
今回、代表者はエーザイ株式会社で実施された第II/III相試験成績に基づいて、ALS発症後1年以内の患者を対象に、多施設共同、ランダム化、プラセボ対照、二重盲検並行群間比較試験を医師主導治験で実施することを計画しました(JETALS;Japan early-stage trial of high dose methylcobalamin for ALS) 。また、16週間の二重盲検期を終え、継続投与を希望する被験者に対して最長2020年3月までメコバラミン50 mgの治療を継続することを可能としました。

治験の概要
本治験では、128名のALS患者を対象に高用量E0302(メコバラミン50mg)またはプラセボのどちらかを使用して、E0302の有効性と安全性を詳しくまた客観的に調べることを目的としています。また、4か月間の二重盲検期を終えた被検者にE0302を継続して供給する継続投与期を設けています。治験の意義
本治療の有効性が確認でき薬事承認されると、ALS患者の早期治療がなされた場合に症状の進行抑制と著明な延命効果が期待できる世界初の治療薬となります。対象患者とスケジュール
・選択基準(1)本治験への参加について、本人より文書同意が得られた患者
(2)同意取得時の年齢が20歳以上の患者
(3)Updated Awaji基準のdefinite、probable又はprobable-laboratory supportedに該当する孤発性又は家族性ALSと診断された患者
(4)観察期開始時において発症後1年以内の患者
(5)観察期間(12週間)中に、ALSFRS-Rの合計点数が1~2点低下した患者
(6)ALSの重症度基準で重症度1度又は2度の患者
(7)外来通院が可能な患者
・除外基準
(1)気管切開を施行している患者
(2)非侵襲的呼吸補助装置を装着したことのある患者
(3)%FVCが60%以下の患者
(4)慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有する患者
(5)ビタミンB12欠乏に基づく神経症状のある患者
(6)同意取得前4週間以内にエダラボンを使用している患者
(7)同意取得後、リルゾールの服用を開始した患者、又は用量を変更・中止した患者
(8)認知機能障害を有する患者
(9)妊婦又は妊娠している可能性のある患者
(10)重篤な呼吸器疾患、心血管疾患又は肝腎疾患を有する患者
(11)悪性腫瘍を有する患者
(12)同意取得前12週以内に他の治験に参加していた患者
(13)薬物アレルギー又は重度のアレルギー疾患(アナフィラキシーショック等)を既往又は合併している患者
(14)治験責任医師又は治験分担医師が本治験への参加を不適当と判断した患者
上記の基準を満たす患者を対象に、観察開始時の適格性を判定し、12週間の観察期間後に観察終了時の適格性を判定します。中央登録後に被験者をプラセボ群、メコバラミン50 mg群のいずれかの群に割り付け、治療期登録例とします。レスキュー治療として、希望した患者に対しては投与継続期でメコバラミン50 mgの週2回筋注を続けます。

治験参加の方法
本治験での目標症例数は128例で、すでに本学病院神経内科に通院中の方、他医療機関からの紹介などにより本院を受診した方、今後、本院を受診する予定の一般の方が対象です。2017年11月7日に徳島大学病院で治験登録が開始され、今後当院を含む全国19施設で本治験が開始される予定です。治験参加施設については治験調整事務局までお問い合わせ下さい。募集期間は2019年9月まで、または症例数が目標に達するまでとします。参加期間は、治験への参加に最初に同意してから約7か月、あるいは、継続供給を受ける場合は2020年3月までを予定しています。本治験は医師主導治験であり、治験薬投与に関する費用や一部検査の費用は研究費から支払われますが、治験に必要な検査のほとんどが患者負担となる取り決めが行われています。実際の患者本人の病院への支払額は患者の加入する保険の種類によって異なります。
用語解説
・筋萎縮性側索硬化症(ALS):運動神経が障害され全身の筋力低下、筋萎縮が進行します。嚥下障害、呼吸障害も呈し死にいたります。リルテック®錠(リルゾール)、ラジカット®(エダラボン)のみが保険適用薬であるがその効果は限定的であります。・メコバラミン:活性型のビタミンB12であり末梢神経障害の保険適用薬です。大量投与によるALSへの有効性が期待されています。
・Updated Awaji基準:ALSの最新の診断基準。従来の基準(revised El Escorial基準)より早期に診断することができます。
・ALSFRS-R(amyotrophic lateral sclerosis functional rating scale revised):ALS患者の身体能力を評価する指標で12項目あり48点が満点。
<患者からの治験に関する問合せ先> |
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徳島大学病院 治験調整事務局 〒770-8503 徳島市蔵本町2丁目50-1 TEL:088-633-9658 FAX:088-633-7311 E-mail:chousei763@umin.ac.jp |
<報道関係からの取材に関する問合せ先> |
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徳島大学病院 総務課広報・企画係 〒770-8503 徳島市蔵本町2丁目50-1 TEL:088-633-7463 FAX:088-633-7009 E-mail:bsoumuss1@tokushima-u.ac.jp |