研修医・長期短期専修医募集

活動紹介


■ 研究

電気生理学  神経遺伝学  運動異常症
神経変性疾患  神経免疫疾患 運動関連疾患


■ 診療

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■ 教育

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■ 業績集

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電気生理学



■ 野寺研究室


電気生理研究室では主として筋電図を用いた末梢神経疾患の研究を行っています。

(1)筋電図

末梢神経疾患、筋疾患、筋無力症などの神経筋接合部疾患などの患者さんに対し、検査を行っています。専門家が比較的少ない分野ですので県内他院や県外からもセカンドオピニオンを求めて来院される方が多くおられます。検査スタッフは梶龍兒(教授・日本臨床神経生理学会理事)、野寺裕之(講師・アメリカ筋電図専門医(ABEM)・アメリカ神経筋疾患専門医)、大学院生数名、研修医数名、臨床検査技師数名で行っています。海外からの筋電図研修受け入れと国内他大学からの短期国内留学も数名実績あり、今後も喜んで受け入れます。

(2)研究

日常の筋電図検査を基にして研究発表を行っています。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は徳島大学神経内科の重要研究対象疾患ですが、電気生理研究室でも変性疾患グループと協力して研究を行っています。

(2-1)淡路ALS基準の制定とその臨床応用
ALSの診断は臨床診断が中心ですが、筋萎縮が明らかでない早期例や限局例を中心に筋電図が診断の重要な要素となっています。ALSの電気診断基準として改定El Escorial基準が使用されてきていますが、早期ALSでの検査感度の低さが問題となっておりより有用な基準の制定が課題となっていました。そこで徳島大学神経内科が淡路島で国際シンポジウムを開催し、世界各国からALSの有名研究者を招いて新基準を制定しました(Awaji criteria(淡路基準))。2008年にだされたこの基準はすでに100本ほどの論文に引用されるほど受け入れられ、新しい世界標準基準として認められてきました。淡路基準を実際の患者さんに適応した論文は世界中から報告されていますが、我々の研究室からも咽頭部初発型の診断に有用であること、淡路基準が改定El Escorial基準より数か月早期に診断可能であることを報告しました(Okita, 2011)。様々な視点から淡路基準の有用性を現在も検討中です。



(2-2)閾値追跡法
神経は基本的には電気コードと同じで、電気活動の伝達を通じて情報のやり取りを行います。神経膜は普段は分極し興奮せず、指令がくれば短時間脱分極して伝導を行い、すぐに元の分極状態に戻ります。神経興奮性の制御は神経機能の維持に重要です。神経興奮性が低下すれば中枢の指令が末梢に到達せず、脱力をきたします。逆に興奮性が異常に亢進すれば自発放電が生じ痛み、筋けいれんなどの症状を生じます。ALSや末梢神経疾患には神経興奮性の異常による上記の症状がよく見られますが、通常の筋電図では神経興奮性の詳細な評価は出来ません。基礎研究では神経細胞を取ってパッチクランプ法などで興奮性を評価できますが、その方法を患者さんに応用することは侵襲が大きく殆ど不可能です。

ロンドン大学のHugh Bostock教授が開発した閾値追跡法は通常の筋電図(神経伝導検査)類似ですが各種刺激電流を自動制御することで神経興奮性の評価が20分程度の検査で出来ます。神経興奮性にかかわる数種類のイオンチャネル機能もコンピュータモデルを用いることで可能なため、パッチクランプ法で動物細胞からのみ得られていた情報が無侵襲的に患者さんから記録できる画期的な方法です。

閾値追跡法を用いた研究の方向性はいくつかあります。(1)神経疾患のバイオマーカーの開発:ALSを代表とする変性疾患では発症前診断、予後の予測、進行・改善判定などを目的として血液や髄液などを用いたバイオマーカーの開発が盛んです。電気生理検査もバイオマーカーの一つとして位置づけられており、ALSの病態生理とも関連していると考えられている持続性Na+電流や遅いK+電流の経時的評価の有用性を検討しています。(2)患者さんの治療ターゲットの設定:糖尿病や抗がん剤などによる末梢神経障害は痛みやしびれを多く伴います。先述したイオンチャネルの機能障害が異常興奮性を起こし症状を示すと思われていますが、実験動物とは違い患者さんのイオンチャネル障害は各人で程度が異なります。そのため、あるイオンチャネルに対する薬が効く患者さんもいれば、全く効果の無い方もおられます。それはターゲットとなるイオンチャネル機能評価をせずに治療しているからと考えます。閾値追跡法のデータをモデリングすることで患者さんのイオンチャネル機能異常を定量化し、各人の機能異常に応じた薬を投与するオーダーメード治療を可能とするようなデータ解析を行っています。対象は神経疾患の患者さんに留まらず、疾患モデルマウスでも行っています。




 

(2-3)神経筋超音波
最近の画像技術の進歩により、末梢神経の詳細な画像化が可能となっています。超音波を用いると末梢神経の全長にわたった形態評価が可能です。臨床的に診断が困難だった局所の末梢神経良性腫瘍の検出が可能となります。また、末梢神経変性を示唆する神経径を経時的にALSや末梢神経障害の患者さんから記録することでバイオマーカーとしての応用を検討しています。
ALSでは末梢神経の萎縮を反映して、超音波で神経萎縮を認めることを報告しました(Nodera, Takamatsu, et al. Clinical Neurophysiology. 2014)。我々は末梢神経と神経根レベルでの幅広い評価を行っており、早期診断や進行の把握に対して有用と考えます。
さらに、筋の超音波を行うことで病理像との対比を行います。筋疾患において筋生検は重要な検査ですが、適切な部位からの採取を行うことは容易ではありません。高度に障害された組織には筋組織が消失し、逆に軽度障害の組織では病変がほとんど存在しないこともあります。超音波で中等度に障害された部位を選択し生検することで適切な病理評価が可能となります。表面からは検出困難な線維束攣縮は、超音波で見れば深部筋の活動を評価可能で先述の淡路ALS基準をさらに進化させる方法として有用性を検討中です。