研修医・長期短期専修医募集

神経内科こぼれ話


神経内科が扱う病気には、脳梗塞など良く知られた病気から、ちょっと馴染みの薄い珍しい疾患まで様々です。
ここで、意外と知られていないけれど、神経内科でよく見受けられる疾患や、健康のために気をつけたい、神経内科にまつわる日常生活でのアドバイスをご紹介しましょう。

1)むずむず脚症候群
2)新婚さんの麻痺
3)半側空間無視について
4)笑い発作の原因
5)パソコンが打てるのにペンで文字が書けない
6)異常に寒がり、暑がり
7)階段が降りられない、
   膝ががたがた笑う、といった場合は・・・
8)高次脳機能の障害への身近なリハビリ
9)首は噛んではいけません
10)足は組んではいけません
11)ギャンブル依存症とパーキンソン病とドーパミン


1) むずむず脚症候群


 症状としては、特に就寝時に足やすねに虫が這うような変な感覚を覚えます。足を動かすと落ち着くことが多いですが、ひどくなると足を動かさないといたたまれないため、不眠になってしまうことがあります。
こういった症状は、鉄欠乏性貧血、人工透析などの方により多く発症することが分かっています。
また、末梢神経障害や脳深部の機能障害などが原因となって起きていることもあります。
いずれにせよ、良く効く治療薬が、いくつかあるので、ご相談ください。



2) 新婚さんの麻痺


 新婚でアツアツのご夫婦がなる病気です。ご主人が奥様を(逆でももちろん構いませんが)腕枕して寝た翌朝、ご主人の手の甲がしびれ、また手首と指が持ち上がらなくなる現象です。
上腕骨のすぐ上に橈骨神経が走行していて、その神経が圧迫されて起こるものです。通常は、しばらくすると自然に治ります。


3)半側空間無視について


 「右脳を鍛える」という本が売れたことがありましたが、右脳、左脳それぞれは、反対側の体を支配しています。つまり、右脳は左半身の運動・感覚・視野などを支配しています。脳梗塞などで右脳に障害がある場合に現れる症状として、視野の左半分を認識しないということがあります。
これは、「横に引いた線の真ん中に印をつけてください」とお願いすると、中点よりかなり右側によってしまうことで、判断ができます。体の左半分に対する注意力も低下するため、服が着られない(=着衣失行)という現象が見られます。
左側の袖を通せないために起こることで、運動・感覚麻痺が無くてもそうなってしまいます。


4) 笑い発作の原因


 普通てんかんというと、口から泡を吹いて全身の筋肉ががたがた震えるイメージが強いと思います。
視床下部という脳の深部に良性の腫瘍が出来たときにはてんかん発作としておかしくも無いのに笑い声を上げるというのが見られます。


5) パソコンが打てるのにペンで文字が書けない


 手には何の問題なく、箸もキーボードも上手に使えるのにペンで字を書くときだけ指がこわばって書けなくなる、という症状です(書痙といいます)。
文字を書こうとして脳に入った感覚情報が邪魔をして筋肉の異常緊張(ジストニア)をきたすと考えられています。ボツリヌス療法や経頭蓋磁気刺激療法の良い適応です。他にも音楽家が楽器を弾くときに手が動かなくなることも見られます。


6) 異常に寒がり、暑がり


 最近、温度を感じ取る受容体が特定され、その一つにはトウガラシの成分であるカプサイシンによって活性化される蛋白があることが分かってきました。
それらの受容体の機能異常により、真夏でも服を何枚も重ね着したり、いつでも真夏の砂浜のような熱感が足の底にあったりするといった症状が出現すると推察されています。つまり、血管の病気の他に、末梢神経などの病気により異常な温度感覚が出現する可能性があると思われます。


7) 階段が降りられない、膝ががたがた笑う、といった場合は・・・


  打腱器で膝小僧をポンとたたいて脚気の検査をする場面をご存知の方が多いと思います。運動神経は脳から手先・足先まで伸びていますが、脳から脊髄まで伸びている第一走者(上位ニューロン)と脊髄から手足にいく第二走者(下位ニューロン)がつながっています。

第一走者(上位ニューロン)に障害があると、腱反射は亢進し、蹴りが強くなります。
逆に第二走者(下位ニューロン)の障害があれば、反射が弱くなります。
首の骨(頚椎)が椎間板ヘルニアなどにより障害されると、すぐ側にある脊髄(重要な神経の束)が圧迫され機能異常を起こし、腱反射の亢進となって現れます。
この場合ちょっとした刺激で手足が反応しますので、筋が緊張しっぱなしになり、階段を下りるために筋を緩めることが出来なくなってしまうのです。
また、ちょっと足に触れるとがたがた震えることがあります。ラグビーなどで首を痛めるようなスポーツをしていたことがあったり、ずっと以前に、交通事故によるむち打ち症になられた場合に、このような症状を訴える方もおられます。


8) 高次脳機能の障害への身近なリハビリ


  脳卒中の患者さんなどで、麻痺は殆ど回復したのに言葉がうまく使えない方がおられます。
カタカナのみ分からないとか、文字に書かれると分かるのに話し言葉が分からないなど様々です。
物を考えてから言葉に出すまでには、脳の色々な部分を経由するからです。
逆から見れば、新聞でも小説でもかまわないので、文章を音読するという行為は、認知症を予防するための有効な方法の1つであるとも言えます。目から入った情報を口に出すことで脳のさまざまな部分を刺激しているわけです。
また、アルツハイマー病などの認知症でも薬剤療法のみで治療できる訳ではなく、本人やご家族の協力が重要です。最近のテレビでも放送ありましたが、本人が興味をもって出来ることを習慣として行っていくことが重要と考えられています。そのような支援を当科医師と言語聴覚士が行っています。


9) 首は噛んではいけません


 犬猫など愛情表現として(?)、子の首を噛むことがあります。人でも恋人同士でそんなことがあるかもしれません。しかし、注意してください。首の横のごく浅いところに副神経が走っているので、噛まれて神経を痛めると激痛と同時に僧帽筋麻痺により肩が持ち上がらなくなります。

恋人に噛まれて副神経麻痺になったという変な症例報告が(おそらく噛まれた本人から)なされています。(Biting palsy of the accessory nerve. Paljarvi L, Partanen J. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1980 Aug;43(8):744-6. )


10) 足は組んではいけません


 足の長い、細めの女性に多い病気です。足を組んで何時間も仕事をしている方がおられますが、膝の横に走っている腓骨神経が圧迫されます(足を組んで下のほうにある側)。
膝から下にしびれが走ったり、ひどくなると足首が持ちあがらなくなります。足を組まなければ自然に治るので余計な心配は要らないことが殆どです。


11) ギャンブル依存症とパーキンソン病とドーパミン


 パーキンソン病は脳細胞から放出される化学物質のドーパミンが分泌不良になることで起こる病気です。ドーパミンは大脳基底核という運動制御にかかわっているのでパーキンソン病では動きが鈍くなったり、震えたり、歩き出しがしにくくなったりします。

パーキンソン病にかかる傾向のある人の解析を行うと、発症前からある性格パターンを持つことが分かっています。それは、生真面目で、ギャンブルなどもっての外というものです。
逆にギャンブル中毒となり止められない人の脳で起こっていることとしては、ギャンブルで大当たりするときにドーパミンが分泌されることです。
放出されたドーパミンは快感や多幸感をもたらすために脳内麻薬となり依存体質になるのです。
つまり、パーキンソン病の患者さんはドーパミンがもともと少なめで、さらに分泌が悪くなって発症するのに対し、ギャンブル中毒ではドーパミンの過剰分泌が起こっているということです。
パーキンソン病の患者さんにドーパミン分泌を良くする処方をすると動きは良くなりますが、ギャンブルに目覚めてしまうという副作用が出る場合があります。