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留学体験記



■NY留学報告
徳島大学病院神経内科 特任助教 佐光 亘

2011年8月から2014年6月まで、New York(NY)にあるThe Feinstein Institute for Medical Research(FIMR)のDr. David Eidelbergが主催するlabに留学させていただきました。その留学に関して報告させていただきます。

 

FIMRはNorth Shore-LIJ Health System(NSLIJHS)の主要な研究機関の一つです。NSLIJHSはLong Islandを中心に展開する巨大医療ネットワークです。NYと言えば近隣に有名病院・研究機関が群雄割拠(e.g. New York-Presbyterian University Hospital of Columbia and Cornell, Mount Sinai Hospital, Memorial Sloan Kettering Cancer Center, Montefiore Medical Center, Cold Spring Harbor Laboratory)していますが、FIMRはその中では世界的にはマイナーな存在です。実際に小生も留学が決まるまではどういうところなのかは全く知りませんでした。しかしながら、NYでは名は通っており、「NSLIJで働いています」というと大体通じます。

 

Dr. Eidelbergのlabはpositron emission tomography(PET)を用いてパーキンソン病とその関連疾患、ハンチントン舞踏病、ジストニアの研究を中心に行ってきました。PCA/SSMという画像解析方法を開発しPET 画像の多変量解析に関して世界をリードしてきました。さらにマウスや認知症の神経画像解析、またPETのみならずMRIにまで方法を広げつつあるときにちょうど参画させて頂きました。特に2011年頃は、MRIグループのメンバーが二人抜け半分の二人になったところの上、MRIの研究対象が主にジストニアであったこともあり(渡米前の専門はジストニア、パーキンソン病の分子生物学、深部脳刺激術)、小生の配属先は意外にあっさりとMRIグループとなりました。そこでMRIの物理学者と信号処理の専門家と三人でチームを組み、遺伝性・弧発性ジストニア、ジストニアモデルマウスの解析を行い、これらの成果の一部は誌上発表できました(Vo and Sako et al., Cereb Cortex 2015; Neurobiol Dis 2015)。中でも主たるテーマはジストニアの視覚入力異常に関するfunctional MRI(fMRI)を用いた研究でした(Sako et al., Brain 2015)。 blocked designを使った解析とともに、本来PET用に開発されたPCA/SSM解析のresting state fMRI (RSfMRI)への応用も行いました。このジストニアの視覚入力異常に関する研究は日本でも引き続き行いたいと考えています。この時チームを組んだ二人とは今も仲良くさせていただいており、帰国後も連絡を取り合いながらそれぞれの研究を行っています。特に、物理学者とは共同でグラントにも申請する予定で、その準備を今まさに進めているところです。

 

さらに、Alzheimer's disease neuroimaging initiative(ADNI)のPETデータへのアクセスを許可して頂き、そのデータに対して上記PCA/SSM解析を応用し、アルツハイマー病に発現している異常ネットワークの同定も行いました(Mattis, Niethammer and Sako et al., 2016)。また、正常者に発現している安静時代謝脳ネットワークをDr. Spetsierisが同定しましたが、アルツハイマー病におけるその発現の低下を小生が証明し、共著として彼女の論文にも名前を加えてもらいました(Spetsieris et al., Proc Natl Acad Sci U S A 2015)。

 

約三年間にわたりNYに滞在しましたが、さらなる留学延長もできればと思い、アメリカでグラントにも応募させて頂きました。残念ながらこれに関しては良い結果は得られませんでしたが、その過程は非常に良い勉強になりました。特にDr. Eidelbergからグラントを書くときに大切な事項について直接教わることができ、そのおかげもありまして、帰国後一年前後で科研費含むグラントを四つ得ることができました。ボスには今も感謝しています。

 

私生活でも多くの素晴らしい人物と出会うことができ、多くのことを学ぶことができました。ある先生との出会いがきっかけとなりメタ解析という手法を習得することができ、この方法論の画像解析への応用などにも成功し、これらの成果も報告することができました(Sako et al., J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014; J Parkinsons Dis 2014; Parkinsonism Relat Disord 2014; Mov Disord 2014; J Clin Neurosci 2015)。別のある外科の先生からお願いされ、先ほど述べましたADNIのみならず、92672人分の臨床情報の詰まったビッグデータ解析に関わる機会も頂きました(Tam et al., Am J Surg 2015)。

 

ゆったりと流れるときの中で、神経内科のみならず広範な分野の医師や研究者との交流を通じて日本では得難い刺激を受けたことは今も小生の臨床・研究の礎となっています。 このような素晴らしい留学の機会を作ってくださった柳馬場武田クリニック浅沼先生、徳島大学脳神経外科牟礼先生、厳しい状況下での医局運営にも関わらず快く送りだしてくれた梶先生、和泉先生と医局員の皆様に感謝の意を表して筆を置かせて頂きます。

 

References

1) Vo A and Sako W, et al. Hum Brain Mapp 2016, in press.
2) Mattis P, Niethammer M and Sako W, et al. Neurology 2016, in press.
3) Sako W, et al. Brain 2015 138(Pt 12): 3598-3609.
4) Sako W and Murakami N, et al. J Clin Neurosci 2015 22(3): 575-577.
5) Spetsieris PG, et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2015 112(8): 2563-2568.
6) Tam SF, et al. Am J Surg 2015 210(5): 864-870.
7) Vo A, and Sako W, et al. Cereb Cortex 2015 25(9): 3086-3094.
8) Vo A and Sako W, et al. Neurobiol Dis 2015 73: 399-406.
9) Sako W and Murakami N, et al. Mov Disord 2014 29(13): 1599-1605.
10) Sako W and Murakami N, et al. Parkinsonism Relat Disord 2014 20(8):873-877.
11) Sako W and Murakami N, et al. J Parkinsons Dis 2014 4(3):405-411.
12) Sako W et al. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2014 85(9):982-986.